部下を褒めて伸ばす上司がいました。
ちゃんと叱りもするのですが、どちらかというと、少しおだててコントロールするに近い印象です。
しかし、その上司が他店に異動になってから私がいた店舗の部下たちは、どんどん崩壊していきました。
わたしはこの原因が褒めて伸ばすことにあったのではないかと、ほぼ確信しています。
今回は、褒めて伸ばすことの弊害について書いていきます。
褒めて伸ばすのはコントロールしたいだけで、教育にはならない
褒めて伸ばしたい理由は、都合の良いように動いて欲しいから
上司をみていて思いましたし、自分の行動を見つめ直してもそうですが、褒める時って、おだててもっとコントロールしやすくしたいからですよね。
もちろん単純に「えっ、すごい!こんなコトまでしてくれたのかい!ありがとうー!!」というときにも使うと思いますが、新人や、そうでもない部下を操縦するのに一番無難なのが、”褒める”なんですよね。
ましてや現代では「指示」という硬い方法が、あまり通用しなくなってきています。部下と円滑なコミュニケーションを築くにあたって、一番無難なのが褒めることです。
つまり、褒める=自分がコントロールしやすいように相手をおだてるということですよね。
これでは、部下の教育という点からは少し外れてしまいます。
誉めて伸ばすだけでは、教育には繋がらない
結論的に、褒めて伸ばすだけだと教育には繋がりません。部下の教育って、どうやったらいいのか正直わたしもわかりませんし、そもそも部下の教育とは、どこまでを指しているのかも疑問です。
人間的な部分まで及ぶのなら、かなり熱心に向き合わなければいけません。でも、熱心に向き合ったところで相手に確実に伝わるわけでもないし、そもそも途中で退職してしまう人の方が多いです。
(退職理由が指導とは直接関係なくても)
褒めて伸ばされなくても、学ぶ側にとって教育の仕方はあまり関係がない
なぜなら学ぼうとする人は、どんな人からも学ぼうとするから。
- 直接聞きにいったり
- 少し早めに出勤して技術を見せてもらったり
- 出来上がったものを見せてもらって、どうしたら同じようなクオリティになるのか試行錯誤したり
とにかく、それを学びたいんだ!という強い気持ちがある場合は、相手の教え方ではなく、自分から学びに行くので問題ないです。
でも多くの場合は、そこまで熱量がないですよね。熱量がないのは構いませんが、できない言い訳を教育者に求めるのはどうかな〜と。もちろん、中には最低限すら教えることをしない人もいます。これは論外
なので、教え方はあまり気にしなくていいというのが私の持論です。
*注意*
熱量が少ない分、覚えるのもやはり多少時間がかかります。あまりにも遅くてやる気を感じない場合は注意が必要ですが、あまり急かさないことです。
最近、若い人が教育係になってるのを多く見受けますが、結果を早く求めすぎです。
今の25〜35歳くらいまではこの傾向が強いですね。
部下を褒めて伸ばしたあとに起こった弊害
褒めて伸ばされた部下ばかりで構成された社内が、崩壊していった記録を書いていきます。
自意識過剰になって勝手なことをしだす部下たち
自意識過剰になる→指示を無視する→勝手なことをしだすようになる→自分の行動が正しいと思ってしまう
褒めすぎたことにより、別にたいしたこともないのに実力があると勘違いしてしまったんですね。
まるで自分が特別かのように。そりゃそうです。対して実力もないうちから持ち上げてしまったら、錯覚するのも無理ないです。

褒めてほめて自信がつき始めると相手はこう考えます。
〈自分はこんなにも早く仕事ができるんだ~。〉
〈自分の判断に間違いはない!だって褒められたことしかないもん!>



でも過信がなければ気づけたはずです。









(…出来上がったものが全然違う)
〇〇してと言ったはずだけど?



意図があって相手に指示をしたのに、相手は自己判断で勝手に変更してしまった。言われたことを無視して。
「だったら、理由をつけてちゃんと言ってほしい」と思うかもしれませんが、本来依頼した内容通りに進行していがなければいけませんよね。
「わかりました」と返事をしたわけですから。



これは褒めて伸ばした子に非常に多く見られた傾向です。
褒められないと仕事をしなくなった部下たち
人が見ているときしか仕事をしない。
褒められることが目的となってしまった。
私や他の上司がいるときは仕事をしてくれているので、どうして仕事が終わっていないのか次の日の朝、疑問で仕方なかったです。
忙しくなってしまったのかな〜?と最初は思っていましたが、ある日別のメンバーに聞いてみたところ、「全然忙しくはなく、お喋りしてましたよ」と。
あぁ、見てる時だけ仕事してる風で、見てないところでは全く仕事していないんだと確信しました。
あまりにも夕方の生産性が悪いのでいずれ上司も気付くと思って、様子を見ました。
褒めて伸ばしてくれていた上司が異動になってしまい、別の上司が来た時のこと。
褒めて伸ばしてもらっていた子たちが揃いもそろって、自分から仕事をしなくなってしまいました。
そのうちの1人が漏らした言葉ですが──
「だって褒めてくれる人いないし…」
この言葉を聞いた時に、きっと本音はそこだろうなとすぐに気が付きました。
のちに、ほかの子たちに聞いてみたところ、
「褒められないから楽しくない。」
「褒められないからやる気が出ない」
でした。
特に褒められていた4人は顕著に表れており、褒めてほしい気持ちが強かったです[jin_icon_aqua color=”#33cccc” size=”15px”]



あの人、えれーもん作って異動していっちゃったなぁ(笑)
わたしも別に上の立場の人間ではないので、私の褒めなんてなーんの意味もないんですよね。あの上司の褒めじゃないと無理なんだろうなぁ。



「褒めて伸ばす」の褒めるって必要?
仕事をやらせるために褒めるのではなく、自信をつけさせるために褒めが必要だとわたしは考えています。
自信がないとミスしかしないという不思議
人って面白いもので、自信がない場合って緊張感がすごいんですよね。
そんなガチガチの状態だと手先もうまく動かないし、仕事の能率も下がってきます。
- 何度もpcの入力ミスをする
- 手先狂う
- 事務だとしてもモノを落下させる
そしてなによりも、自分で自分ができないやつと過度に思い込んでるせいで、自分からミスを招いちゃうんです。
注意ばっかりされて自信をなくしてしまうとどうなるか?
やりたくない…ってどんどん後回しにして結果、期限が迫ってからやりだす。
さらには「自分はミスするし間に合わないし」って理由まで勝手に作っちゃうんです。
なので、こういう人の場合には褒めるが必要だったりします。
どんな時に褒めればいいのか?
これからもずっとその人たちの面倒を見ていくのであれば、これほど強くて手っ取り早い方法はないでしょう。
ですがずっと面倒を見るつもりでなければ、多用は控えましょう。
後から来た人が苦労して、終わるだけです。



そのあとは、
- 機能しなくなり
- 会社の評価はダダ下がり
- 売り上げ激減
- クレームも多発(処理もしない→本社謝罪まで発展)
- 大半はやめていく
という結末でした。
さじ加減が大切としかいえません。
全てに褒めを与えると「やってあげてるんだから」と自信過剰になります。
逆に褒めな過ぎても「全部やって当たり前なんだな…」と卑屈にさせます。
本来は全部やって当然のことですし、仕事でお金をいただいている以上は当たり前なんです。
[jin_icon_checkcircle color=”#e9546b” size=”16px”] 「注意されたことがない」人があまりにも多い時代。
その世代をこれから使っていくのであれば、こちらも動きを変えないと恐らくやっていくのは難しいでしょう。
私の想像ですが、注意されたことがない=褒められるコトすらもあまりないのかもしれませんね。
注意しない=注意できるだけの注意力が親にもないのかもしれません。
だとしたら、目の前にあらわれた褒めてくれる人に過剰に反応してしまうのは当然かもしれません。
『褒めて伸ばす』…それってあなたがいい人になりたいだけでしょ?
褒めて伸ばすは裏を返すと、相手を傷つけないで正す方法を知りたいという気持ちのあらわれ。



注意できない人が多い組織は暴走しがちです、組織自体が。極端ですが、客からクレームが入っても上が注意を放棄します。
前職でありましたので[jin_icon_aqua color=”#33cccc” size=”15px”]
風通しはいいほうがいいです。
褒めて伸ばすだけではなく、時には叱ることも必要です
やっぱり褒めてばかりじゃいられないんですよね…時には叱ることも必要になってくる。
叱るというよりも、「冷静に理論的に指摘する」という方があってるかもしれません。感情をあらわにしても何にもなりませんので。
一度出てしまった言葉はどうにもならない。
大切なのはその後のフォローです。
言ったら言い放しというのがよくないです。相手の心は傷が入ったまま。あなたへの信頼もなくなるでしょう。
いくら正しいことをいっていたとしてもです。
先をみすえて、もしその人と継続しなければいけない関係があるのなら、傷ついた心をそのままにしてはいけません。
フォローの言葉をかけて、少しだけ修復してあげましょう。
それだけで伝わります。(伝わらないのは、まだそこまで成熟していないのでしょう)
叱る本質と個人の成長について
叱る本質は、「いけないコトをした」というのを理解させることにありますよね?
その理解する力は、残念ながらこちらではどうすることもできません。
受け取り手の問題です。
母親がやんちゃしようとしている娘を正すときと同じです。娘の気持ちもわかるが、やっちゃいけないこと。
理由を説明しても納得できてないようす。
つまり、娘の理解力がまだそこ追いついていないのです。
これと同じで、いくら相手の理解力に合わせてみても、どうしても時が来なくちゃわからないこともあります。
- 言葉を聞いただけで響くタイプ
- ある程度時が経過しないと気づけないタイプ
- 自分で実体験しないと気づけないタイプ
響く型は人それぞれで違います。
褒めて伸ばすだけじゃない、教育方法【信頼に勝るものは無し】
1つだけ、私がみた中で唯一、嫌われないで叱る方法があります。それは相手の絶対的な信頼を得ることです。
信頼していない人(尊敬してない人)から言われるから、角がたつ。その人が自分のことを認めてくれているのかもわからないから、「こんな人に叱られるなんて許せない!」ってなるんです。
でも信頼している人から叱られるならどうでしょう?
「納得はできない…けど、自分の信頼しているあの人がいうんだから仕方がないか…」と観念するモノです。
「あの人は自分のことを理解してくれている。そのうえで叱ってくれてるんだ…。わかったよ。」
こんな感じです。
そしてこの方法が最も、相手が自発的に頑張ろうとする意志が顕著にみられました。